糖質制限で体に増えるケトン体に注意!正しい糖質の取り方を徹底解説

糖質制限をすると体内でケトン体が作られます。ケトン体は脳や筋肉などのエネルギー源になりますが、増えすぎると健康を害する危険があるため、注意が必要です。この記事では、ケトン体の働きや正しい糖質の摂り方についてまとめています。論文ベースで管理栄養士が解説するので、健康的な方法で理想の体を目指したい方は必見です。

ダイエット方法として人気の糖質制限。糖質制限をすると体内でケトン体が作られることを知っている方も多いでしょう。ネットでケトン体について調べると、良い意見も悪い意見もありますよね。

「ケトン体が増えすぎると体調を崩すって本当?」
「がんばって糖質制限してもダイエットに失敗したら悲しい…」
「正しい糖質の取り方に関するプロの意見を知りたい!」

この記事では、そんな糖質制限とケトン体に関する疑問を解決していきます。

  • ケトン体の働きと悪影響
  • 正しい糖質の摂り方
  • 糖質制限を行うデメリット

上記のように、糖質制限とケトン体に関する情報をギュッとまとめました。

なお筆者は管理栄養士であり、時代によって変化する栄養学を勉強しています。正しい糖質摂取により、肥満寸前から16kgの減量を成功させた私が、「糖質制限とケトン体」に関する情報を分かりやすく解説します。

ダイエットに失敗しない糖質摂取について丁寧にお伝えしていきますので、ぜひ最後までお読みください!

ケトン体とは?働きと悪影響について解説

「糖質制限をすると、ケトン体が増える」と聞いたことがある方もいるでしょう。しかし、ケトン体が増えすぎることで起こる悪影響まで理解していない方も多いでしょう。

ここでは、ケトン体の働きや悪影響をおさらいしていきます。

ケトン体は脂肪の代謝産物

ケトン体とは、脂肪の代謝産物です。肝臓のグリコーゲンの枯渇が続くことで脂肪が分解され、ケトン体が作られますケトン体は、脳や筋肉などあらゆる臓器で利用されるエネルギー源です。

私たちは、通常、エネルギー源としてグルコースを消費しながら活動しています。グルコースは食事から摂取した糖質から生み出せるほか、肝臓に貯蔵したグリコーゲンから生み出せるもの。これらが枯渇したときに始めてでてくるのが、ケトン体です。

ちなみに、肝臓のグリコーゲンが枯渇するのは絶食から約24時間後です。つまり、そこからケトン体がでてきます。

ケトン体は脳の栄養源になる

ケトン体は、脳の栄養源になります。脳は、標準的な体型の成人では体重の2%ほどの重量しかない臓器ですが、エネルギー消費量は全体の20%を占めます。脳は非常に多くのエネルギーが必要であることがわかりますね。

エネルギー消費の激しい脳のエネルギー源は、主に以下の3つです。

  • グルコース
  • ケトン体
  • 乳酸

このうちグルコースは、絶食などで糖質を摂取できないと、すぐに枯渇してしまいます。もし、脳のエネルギー源がグルコースだけだったら、常に糖質摂取に神経を尖らせなければなりませんが、そのようなことはないですよね。

私たちの体は、ある程度は糖質を摂取できなくても活動できるようになっています。先ほどお伝えしたように、肝臓のグリコーゲンまで使ってしまったら、ケトン体が作られるようになります。このケトン体が脳に供給され、栄養源として働くのです。

ケトン体は頭痛や倦怠感を引き起こす

血液中にケトン体が増えすぎると、頭痛や倦怠感を引き起こすことがあります。知識がないまま糖質制限を始め、摂取量を抑えすぎると、ケトン体が増えていきます。

ケトン体は酸性なので、このまま食事内容を変更しなければ、体が酸性に傾くケトアシドーシスになる可能性があるので注意が必要です。ケトアシドーシスになると、頭痛や倦怠感が現れ、放っておくと昏睡状態に陥ります。

少々の糖質制限を行った程度では、このような事態になることはないので安心してください。ただし、無闇に糖質を制限すると健康に影響を及ぼすことを理解しておくことが大切です。

糖質制限によってケトン体の産生を促すケトジェニックダイエットが有名となっていますが、主に糖尿病患者の食事法として導入されています。医師の監視下のもと行う食事法なので、気軽に試すのはやめておきましょう。

ケトン体を増やしすぎない糖質の摂り方3つ

健康的にボディメイクをするには、正しい糖質摂取の知識が欠かせません。ケトン体を増やしすぎない糖質の摂り方は以下の3つです。

  1. 摂取基準を満たす
  2. 運動後に必ず糖質を補給する
  3. 長時間するなら運動中も糖質補給する

それでは、順番に解説していきます。

1. 摂取基準を満たす

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日の摂取エネルギーのうち50%〜65%を炭水化物で摂取することが定められています。この基準を守っていれば十分に糖質を補給できるので、ケトン体が増えすぎることはありません。

炭水化物は、厳密には糖質と食物繊維に分けられます。食物繊維は、ほとんどエネルギーとして利用されない栄養素です。そのため、エネルギーに関わる摂取基準では、炭水化物について考えるときに食物繊維を無視してOK。炭水化物=糖質と考えて問題ありません。

つまり、1日の摂取エネルギーのうち50%〜65%は糖質から摂取していきます。例えば、1日に1500kcal摂取する人は、750kcal〜975kcalに相当する糖質が必要です。糖質1gあたり4kcalなので、188g〜244gが目標量となります。

2. 運動後に必ず糖質を補給する

運動をすると、グルコースがエネルギー源として消費されます。まず、筋肉に蓄えられているグリコーゲンが利用されます。さらに血液中のグルコースも利用されると、血糖維持のために肝臓のグリコーゲンの分解が進むため、ケトン体が産生されるというわけです。

運動後に糖質を摂取できていますか?プロテインは飲んでも、糖質を含む食品を食べる方は少ないのではないでしょうか。

運動をしたのに糖質を摂取しないままでいると、肝臓のグリコーゲンが枯渇し、体内にケトン体が増えていきます。運動後は、バナナやおにぎりなどから糖質を摂取しましょう

3.長時間するなら運動中も糖質補給する

運動が長時間に及ぶときは、運動中の糖質補給が有効です。こまめに糖質を摂取することで、ケトン体が増えすぎるのを防げるだけでなく、疲労の軽減も期待できます

長時間運動するときは、スポーツ飲料がおすすめです。スポーツ飲料であれば、運動中でも手軽に糖質を補給できます。運動で失われがちな水分やミネラルも同時に摂取できるのも嬉しいポイントです。

ただし、運動をしているからといってスポーツドリンクをいくらでも飲んで良いわけではありません。長時間でも激しい運動をしないときは、スポーツドリンクと水を併用するなどして、糖質量を調整しましょう。

論文ベースで解説!糖質制限を行うデメリット2選

糖質制限に関する論文を読んだことはありますか?ネットは多彩な情報であふれています。糖質制限が良いという意見もあれば、悪い評価も…。

ここでは、糖質制限を行う2つのデメリットについて、論文をベースにして解説します。

  1. 減量の効果はあるが割りに合わない
  2. 死亡のリスクが高まる

「論文なんて難しい…」と思う方にもわかりやすいように、噛み砕いて解説しますので、ぜひ読んでみてください。

デメリット1. 減量の効果はあるが割りに合わない

実は、低糖質を意識しない、制限の緩やかな食事方法でも痩せるという研究結果がでています。

2005年~2007年の2年間にわたって、イスラエル・ディモナの研究所で行われた研究では、低脂肪食、低炭水化物食、地中海食の全てにおいて被験者の体重が減少しました。この研究では、肥満の人を無作為に3つのグループに分け、管理栄養士が食事指導を行っています。

それぞれのグループの食事は以下の通りです。今回は分かりやすくお伝えするため、エネルギーに関わる内容だけ示します。

【低脂肪食】

  • 摂取エネルギーの制限(男性1,800 kcal以下、女性1,500 kcal以下)
  • 摂取エネルギーの30%は脂肪から、10%は飽和脂肪酸から摂取

【地中海食】

  • 摂取エネルギーの制限(男性1,800 kcal以下、女性1,500 kcal以下)
  • 摂取エネルギーのうち脂質からの摂取は35%未満

【低炭水化物食】

  • 摂取エネルギー、たんぱく質、脂質の摂取量に制限なし
  • 2か月の誘導期間と宗教的な休日の直後は炭水化物20g
  • 体重維持のため120gまで段階的に炭水化物を増やす

この内容を見て、どの食事が実践しやすそうだと思いますか?低脂肪食や地中海食は、摂取エネルギーが制限されていますが、あまり厳しくないですよね。2つの食事で共通で制限されている脂質については、日本人の食事摂取基準(2020年版)よりも多い設定なので、緩いものだと考えられます。

低炭水化物食についてはどうでしょうか。2か月の誘導期間と宗教的な休日の直後は、炭水化物を20gしか摂れません。コンビニのおにぎりを1つ食べるだけで1日分の炭水化物の摂取量を超えてしまうので、非常に厳しいですよね。

2年間の研究で被験者の体重は、低脂肪食群で2.9kg、地中海食群で4.4kg、低炭水化物食群で4.7kg減少しました。低炭水化物食が糖質制限食にあたりますが、減量の効果はあるものの、割りに合わないと感じる人は多いでしょう。

デメリット2. 死亡のリスクが高まる

糖質制限をすると、死亡のリスクが高まるという驚きの研究結果も出ています。これは、国立国際医療研究センターの能登氏らが2013年に発表したメタ分析です。メタ分析とは、複数の実験結果をまとめて新たな知見について考察するもので、統計を使いながら解析します。

研究者は、2012年9月の時点で公開されている論文のうち、9件を選択して解析しています。合わせて272,216人の死亡リスクについて分析したところ、低炭水化物食の危険度が高いという結果となりました。

糖質制限は、糖尿病の治療法の一つで、短期間での減量に有効な手段となっていますが、長期間の継続は、安全とは言えないようですね。

糖質制限がダイエットに有効と言われる本当の理由3つ

糖質制限がダイエットに有効と言われる本当の理由を知りたくありませんか?ここでは、以下の3つを解説していきます。

  1. インスリンの分泌の抑制
  2. 糖質過多の改善
  3. 水分排出の促進

それでは、順番にお伝えしていきます。

1. インスリンの分泌の抑制

糖質制限によって、インスリンの分泌が抑制されます。インスリンはグルコースを脂肪に変えて貯蔵するもの。つまり、インスリンを抑えれば痩せやすくなるということですね。

ただし、インスリンは悪者というわけでもありません。エネルギーの供給にも役立つ、重要なホルモンです。そのため、インスリンの分泌量を調整しつつ、過剰にならないような食事を心がけるのが大切です

調整のポイントは血糖値を意識すること。インスリンは血糖値が急上昇したときに過剰分泌されるからです。血糖値の上昇を緩やかにするために、食事では以下の3つを実践しましょう。

  • 野菜から食べる
  • ゆっくり食べる
  • 糖質が多い食品は最後に食べる

必要な糖質量は維持しつつ、インスリンが過剰にならない食事を心がけましょう。

2. 糖質過多の改善

糖質制限は、普段の食事で糖質を摂りすぎている方に有効です。糖質の摂取基準は、1日の摂取エネルギーの50%〜65%でしたね。

ご飯やパン、麺類が好きで、つい食べすぎてしまうという方は、糖質の摂取量に注意です。糖質過多になっている方は、適正な範囲まで制限しましょう

もし、摂取エネルギーも過剰な場合は、糖質制限によって改善を見込めます。ご飯やパン、麺類などの主食は、おかずとセットで食べることが多いですよね。主食を制限することでおかずの量も減り、摂取エネルギーの減少につながります。

ただし、無闇に減らしてしまうと、エネルギー不足に陥る危険があります。必要な摂取エネルギーを計算した上で行ってくださいね。

3. 水分排出の促進

糖質制限を行うことで水分の排出量が増えることを知っていますか?糖質は水と結合しやすい特徴があります。私たちの肝臓や筋肉に貯蔵されているグリコーゲンも水分と結合しているんですよ。

糖質制限をすると、グリコーゲンが利用されるので、水分が排出されます。肝臓のグリコーゲンは、絶食して24時間後には枯渇するため、水分の排出はすぐに起こります。糖質制限をはじめて間もなく体重が減少した人は、水分が減っただけと思うようにしましょう。

まとめ

今回は、「糖質制限とケトン体」についてお伝えしました。まとめると以下の通りです。

  • 糖質を制限するとケトン体が作られる
  • ケトン体が増えすぎると頭痛や倦怠感を引き起こす
  • ケトン体を増やしすぎない糖質摂取が重要

糖質制限とケトン体は密接に関わっていることを分かっていただけたかと思います。正しく糖質を摂取して、ケトン体を増やしすぎないことが重要です。

糖質制限を始めるとすぐに水分の排出によって体重が減少しますが、筋肉をつけて体脂肪率を下げる方が綺麗なボディーラインになりますよ。正しい知識を身につけて健康的にダイエットを続けていきましょう!

このコラムでは、他にもダイエット・ボディメイクに関するお役立ち情報を発信しています。ぜひ他の記事もご覧下さい。